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バーミンガム・デジカメ便り
Digital Camera Report from Birmingham

第1回 「大陸間お引越し」
No. 1: "Intercontinental removals"

After moving from Japan to UK, I now understand the reality behind an episode from "TNG" (Star Trek: The Next Generation) entitled "The Inner Light". In this episode, a space probe from a planet destroyed more than a thousand years ago delivers the memory of the life there. Indeed, it was done in such a high-tech way, and at first sight I thought: "Why didn't they escape instead of doing all these?" Probably the staff engaged in the creation of the episode had a personal experience of intercontinental movement. Yes, I had to leave many things in Japan because of the limitation in transport!

Very fortunately, I was appointed by the University of Birmingham after an interesting selection process. After the exchange of some e-mails, I downloaded an application form in Microsoft Word file format from University web site, filled it in and returned by airmail; before the interview I was asked to send Microsoft PowerPoint data to the selection committee; and, the interview was done over the phone line, looking at the same PowerPoint data on both sides.

So, now the information can now easily travel at light speed; small things like documents can be sent very quickly thanks to the improved services using aircrafts. However, there is one thing, without weight, but can hardly be transferred across the border... my own credit. The letter of my supervisor, Dr C J Goodman, was necessary whenever I open bank account or get a place to live in. Telephone and electric utility companies request deposits. The issuing of credit cards were refused due to the "credit scores", even though I have got "Gold Cards" which was issued back in Japan!

情報は light speed で……でも

アメリカのSFテレビドラマ 「新スタートレック」 (Star Trek: The Next Generation, TNG) に、 The Inner Light というエピソード (邦題はやや安っぽく「超時空惑星カターン」) がある。 千年以上前に滅んだ星から、 その星の暮らしの記憶を乗せた探査機がやってきて、 宇宙船エンタープライズの艦長にその記憶を伝える、 という内容で、 すぐれたSF作品に贈られる 「ヒューゴー賞」 の1993年度最優秀映像作品賞を受賞したそうだ。

けれど、 最近TNGに 「ハマッて」 いるらしい友人にこのエピソードを見せてもらったとき 「どうしてその星の人は滅びる前に逃げ出さなかったのか」 と思った。 何しろ、 その記憶を艦長に伝える方法が、 何とかビームで艦長の意識を乗っ取ってしまう (しかも無線で!) という、 相当高度なワザだったからだ。 そんな技術があるのだったら、 逃げ出すことくらい……。 それに対して友人いわく、 「そういう細かいことは抜きにして楽しむべし」。 まあ、 そんなことを考えていては Trekker (スター・トレックの熱烈なファン) にはとてもなれないだろう。

今回、 実際に英国までの引越しをしてみて、 この話がいままでよりは理解できる気がする。

ただの旅行だったら、 成田からロンドンまで直行便で12時間ちょっと。 スーツケースひとつあれば十分だろう。 しかし、 引越しの場合は生活をある程度抱えていく必要がある。 僕の場合、 大量の資料を持ち込むことにしたのが、 特にいけなかったかも知れない (本誌など、 なんと創刊号からすべて送ったのだ!)。 船便で1m3、 航空便で25kg×1箱の荷物を別送。 さらに、 限度ぎりぎり (実は軽くオーバーしていた) の手荷物をかかえてゆくことにした。 それでも、 いくつかのものは、 泣く泣く置いて行くことになった。

TNG はアメリカのドラマだから、 大陸間移住の経験を持つスタッフが多そうだ。 このエピソードも、 彼らの個人的経験の反映だったのかも知れない。 実際、 情報は light speed で送れても、 荷物はそうはいかないのだ。

Chamberlain Clock Tower
[Photo-1] 大学の中心にある Chamberlain Clock Tower。町のあちこちからよくみえる。
(2001. 8. 14 撮影。大きな画像(JPEG): 70kB
Chamberlain Clock Tower in the middle of the campus, which can be seen from many parts of the area around.
(Photo taken: 14 Aug 2001. Larger image (JPEG): 70kB)

国際電話で interview

僕は、 東京大学と東京電力でそれぞれ3年ずつ、 合計6年間にわたって、 国内で研究業務に従事してきた。 その後、 2001年7月から、 縁あって英国 The University of Birmingham (バーミンガム大学) の Colin J. Goodman 先生 (専門は電気鉄道) の研究グループで研究員として勤務することになり、 Birmingham に移ってきた。

この機会を得るにあたっては、 僕も公募に対して応募書類を提出し、 選考を経て採用された。 その公募広告がまず出る場所は、 いまやインターネットのウェブページである。 応募書類の書式も Microsoft Word 文書ファイルの形式で公開されているから、 ダウンロードして作成し、 返送すればよい。 (さすがに電子メールはだめだが)

一連の経緯のなかでも、 面接 (interview) がもっとも驚くべきスタイルだったろう。 Goodman 先生のご提案によって行われた電話 interview は、 予め Microsoft PowerPoint のプレゼンテーションデータを日本から電子メールで送信しておき、 そのデータを日英で同時に眺めつつ、 プレゼンテーションと質疑応答を電話回線経由で行う、 という形であった。

My flat
[Photo-2] 筆者のフラットのあるあたり。研究室から徒歩わずか20分。
(2001. 8. 15 撮影。大きな画像(JPEG): 110kB
The area around my flat. Only 20 minutes' walk from the laboratory.
(Photo taken: 15 Aug 2001. Larger image (JPEG): 110kB)

信用は送信できない?

採用決定後、 大学当局が、 英国雇用省に対して僕の労働許可証の申請をする。 時間がかかるといろんな人に脅されたが、 これも日本からの書類到着後わずか1週間ほどで交付された。 大学や雇用省の事務処理が迅速になったこともあるが、 やはり航空機を生かした高速郵便等のサービスが充実してきたことが大きい。 例えば、 郵便局のEMSなら、 書類は3日で日本から英国に届くようだ。

だが、 書類が揃えば入国はできるが、 それだけでは 「不法入国ではない」 という以上の意味はないようだ。 簡単にいうと、 何をやっても信用されないらしいのだ。

住居を定める、 銀行口座を開く、 というのがとりあえず行うべきこととしては最も重要だが、 どちらも Goodman 先生の紹介状がないとスムーズにことが運ばなかった。 それがすめば、 あとは紹介状なしでも、 生活できるところまでたどり着いたが、 不動産屋はもとより、 ケーブルテレビ(電話)も電力も、 みなデポジットを要求してくる。 銀行にしても、 口座は開設してくれても、 クレジットカードは信用スコアが足りないとかで、 発行拒否である。 インターネットを閲覧できるようになったから、 どれどれとオンラインショッピングをしてみたところ、 日本のクレジットカードは受け付けません、 といわれたことも。

質量がないにもかかわらず、 容易に送信できないのが、 信用というやつであるらしい。

(第1回おわり)

高木 亮 / TAKAGI, Ryo webmaster@takagi-ryo.ac
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