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橋梁ざんまい >> [橋梁訪問記] 浜松町駅構内Bo
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ページ執筆 1999. 2. 7
最終更新 2003. 2. 10

浜松町駅構内こ線人道橋

橋梁訪問記
1999. 1. 22撮影

「田中賞」のレリーフ 朝の通勤で使う東海道線の下り電車が浜松町駅を通過するとき、 車内から恰好いい橋が見えるなあ、 いつか写真を撮ってやろう、 と思っていた。 そのチャンスがきたのは1999年1月22日、 入社後頻繁に代理出席するようになった委員会の終了後の空き時間のことであった。

その橋は東京ガスや東芝の本社等がある海側を結ぶ通路だから、 以前にも通ったことはあるが、 子細に観察したことはなかった。 橋の名前も資料がないからわからない。 どうやって調べようか……と考えながら橋に近づいて見ると、 西側の橋詰に土木学会から贈られた 「1985田中賞」 なるレリーフがあるではないか。 こういうのがあると、 なんだか自分だけの発見であるかのように嬉しくなる。 僕が恰好いいと思っているだけでなく、 他の人も価値を認めてくれているということだろうから、 それもいい。 もっとも、 同じ視点で見て価値があると思っているわけではないかも知れないから、 きちんと調査する必要はあるけれど。

橋の外観 左の写真は、 駅の4番プラットホームに立って、 北側からこの橋を写したものである。 北側から見た場合の橋の外観の恰好よさは多くの方々に納得してもらえるのではないかと思う。 存在感のある 「下路フィレンデール」 形式で、 無塗装の耐候性鋼板を使っているものと見られる。 フィレンデール形式 (ちなみに、 国内だけの呼び名だそうで、 本当は下路ラーメン桁ということになるらしいが) の橋としては日本橋川の第一橋梁、 豊海橋が有名だが、 この橋も悪くないと思う。 これに新幹線が入ればもっと絵になるかなと思って、 新幹線電車が通過した瞬間をとらえた写真も撮ってみた。

橋の下を通過する新幹線300系(回送列車) 恐らくは、受賞の主な理由もこの外観の斬新さによるのだろうと思うが(注1)、 よく見ると芝浦側の橋脚が変わった形態をしているから、 軟弱地盤かなにかで基礎の施工になにか困難があったのかも知れない。 いずれ土木図書館にでも調べに行かねばなるまい。 ちなみに、 この橋脚の上部に当たる橋東側には、 ちょっとした休憩スペースが作ってあって、 芝離宮庭園が一望できるようになっている。

芝離宮庭園方面が見える橋上展望コーナー ただ、 多少抜けたところもないわけではない。 せっかくの橋なのだが、 駅側からも海側からも、 わたる前に階段を登らなければならないのは、 バリアフリー化が緊急の課題となっている高齢化日本ではいささか致命的である。 そういうことがあまり考えられていなかったころの作品だからかも知れないが、 しかしたったの15年前のことであるのをどう考えるか。 また、 北側から見ると恰好いいのだが、 南側には東京モノレールの跨線橋があり、 これが醜いことおびただしい。 東京モノレールは跨座式だから、 通常の桁は細く景観上それほど問題にはならないと思うのだが、 東京モノレールの終点駅へのアプローチの位置に上路プレートガーダー(注2)の跨線橋があり、 この上に分岐装置が載っているのである。 分岐装置は普通鉄道のものと違い巨大である。 しかも、 モノレールは東海道線の線路を斜めに横断し、 その後しばらく線路と平行するのだが、 このために軌道桁は橋の東側で急曲線を描くのに、 桁と分岐装置を受けるプレートガーダーは直線桁なので、 軌道桁がこの部分ではみ出してしまっているのだ!  このような醜い橋がすぐそばにかかっているから、 南側から見るとせっかくのフィレンデール桁も台無しになってしまっている。

こ線橋の両端には階段がある。 そんなわけで、 この橋は下り列車で北から近づきながら見るのがいい。 下り列車で朝通りかかるから、 僕はそれを存分に楽しめるというわけである。

(注1)……土木学会誌1985年6月号によると、 やはり施工の困難さが受賞の大きな理由であったようだ。 ただ、 それはここで記載した基礎ではなく、 狭隘な場所で11本の線路 (施工当時。現在は海側の線路が廃止されてしまったからもっと少ないが) を乗り越す工事で、 支保工 (工事中に橋を一時的に支える足場のようなもの) を設置することが出来なかったことに由来する困難さにあったようである。 (1999. 2. 8 追記)
(注2)より正しくは鋼箱桁橋。 (1999. 9. 19 追記)



掲載した写真(スキャナで取り込んだオリジナル画像)

浜松町駅構内こ線橋: データ

  1. 名称: 浜松町駅構内跨線人道橋(はままつちょうえきこうないこせんじんどうきょう)
  2. 跨越対象: JR東日本 東海道線 浜松町駅構内
  3. 橋長: 64.8m
  4. 形式: 下路フィーレンデール(屋根付き、歩行者専用)

出典

  • 土木学会田中賞選考委員会編: 「Bridges −田中賞の橋」, 鹿島出版会 (1999)
    ISBN 4-306-02333-8

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