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デジカメ便り(4): High St
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ページ執筆 2002. 9. 29
最終更新 2002. 10. 1

「ハイストリートでお買い物」

バーミンガム・デジカメ便り 第4回

生活を楽しむ

パラサイト・シングルという言葉はご存知だろう。 独身者がいつまでも親に依存して暮らすことをいうらしい。 収入も含め依存する人が多いようだから、 自分は違うと思いたいのだが、ともかく、いやな言葉である。 なぜいやかといえば、恥ずかしながら僕自身、 英国に来るまで親元にいて、ひとり暮らしの経験がなかったからだ。

英国の教育システムもだいぶ問題があるように見えるが、 自立した若者を育てるという観点からは総じて日本の完敗は明らかだろう。 大学教育においても、 バーミンガム大学はいまだに Oxbridge (オックスフォード・ケンブリッジ) 以来の伝統に基づき学部1年生はすべて学寮などに収容することになっている。 もっとも、進学率が高まった現在、 英国内でもこの意義を疑う声は多いようだし、 日本が大学でこのマネをしたところで、 パラサイト・シングルを一掃などできないだろうが。

ともあれ、 この際じっくりと英国での暮らしを楽しむことも、 滞在の目的のひとつに加えることにした。

借りたフラットは furnished、 つまり家具はあったのだが、 食器や寝具などはなかった。 そこで、ふとんに電子レンジ、お鍋に炊飯器、 などと週末ごとにひとつひとつ揃えていった。 はじめは必死だったような気がするが、 最近はいろいろ「よけいな」ものを買い込んで楽しむ余裕もできてきたと思う。


ハーボーンのハイストリート
(Photo-1): Birmingham 市内、Harborne の High Street。道路はいつも渋滞している。 (2001. 12. 31 撮影)

地域コミュニティの中心として

日常の買い物は、 近所の High Street(ハイストリート) と呼ばれるあたりにいって済ませている。

ご存知の通り、 英国も含めヨーロッパでは一般にどんな通りにも名前がついている。 英国で売っている詳細な都市地図にはたいがい street name をアルファベット順に並べた索引がついているが (AtoZ というのが有名)、 この索引をみると High Street という名前の通りがあちこちに存在する。 辞書によれば high street とは 「目抜き通り」「商店街」といった意味があるのだが、 固有名詞としても使われていることがわかる。

人々の暮らしがより地域に密着していた時代には、 これら High Street のそばには教会・学校・パブ・映画館などが立地し、 まさに地域共同体の生活の中心としての役割を担っていた。 例えば、僕のフラットがある Harborne(ハーボーン)地区の High Street のまわりには、教会がいくつか、それに学校、図書館などがある。 そして、もちろん商店もたくさんある。

Harborne はバーミンガムの city centre に近いから、 この High Street の商店主たちは city centre との競争にさらされてきたに違いない。 近頃は、city centre だけでなく、 巨大な駐車場をもつ郊外型店舗も強力な競争相手だろう。 だが、Harborne の High Street はいまでもわりとにぎやかだ。 City centre から Harborne あるいはそれ以遠へのバスの通り道にあたっているなど、 立地条件が良いためなのだろう。 市内や付近の街にあるほかの High Street もいくつか見て回ったが、 美しい街並みが維持されているところ、 商店がひとつも見あたらないところなど、いろいろだった。


ヘイルゾーウェンのハイストリート
(Photo-2): Birmingham 近郊の街 Halesowen の High Street。 教会を中心に美しい街並みがみられる。 (2001. 11. 25 撮影)
クイントンのハイストリート
(Photo-3): Birmingham 市内、Quinton の High Street。 お店は一軒もなさそうだった。 (2001. 11. 25 撮影)

Bull Ring 再開発

バーミンガム city centre の地図
(図-1): バーミンガム city centre 概略図。 現在、Bull Ring Centre は取り壊され、 新しい建物の工事中。 このすぐ北の Inner Ring Road もすでに閉鎖されている。 Midland Metro の都心部延伸は予定ルートは決まったらしいが、 まだ工事は開始されていない。

残念ながら Harborne High Street だけで全部の買い物が済むわけではない。 自動車は持っていないから、 その場合のお出かけ先は city centre となる。

City centre にも High Street があるが、 それより New Street のほうが目抜き通りっぽい。 このほか、 Corporation Street ぞいにも商店街が広がる。 Colmore Row や Corporation Street などにバス停が分散配置されているが、 ほかの通りは多くが歩行者専用で、 自動車を気にせず買い物ができる。

その city centre で、大規模な工事が進行中である。

New Street 駅そば、 Inner Ring Road の外側にあった Bull Ring Centre を取り壊し、 再々開発するものだ。 古くからあったマーケットを再開発して1964年にできたこの 「近代的」 ショッピングセンター、 決して市民の評判はよくなかったらしい。 建物の外観もさることながら、 駅から Inner Ring Road を地下道で横断しなければならないのも、 不評の原因のひとつだったようである。

現在進行中の再開発は、 大胆にもこの部分の Inner Ring Road を廃止し、 New Street・Moor Street 両駅をショッピングセンターで直接結ぶとともに、 バスターミナルなども配置し、 全体として city centre へのアクセス性向上を図る計画になっている。


新ブル・リング・センター工事現場
(Photo-4): Bull Ring 再開発工事の現場。 背後の円筒形のビルは名物のひとつ Rotunda。 旧 Bull Ring Centre と同時期の1964年の作品で、 再開発後もこのまま存置される。 (2001. 9. 23 撮影)

そして Midland Metro も都心へ

Bull Ring 再開発とともに将来街の様子を大きく変える可能性があるのが、 Midland Metro の city centre 乗り入れ計画ではなかろうか。 これは、現在 Snow Hill ターミナルの片隅に設けられた仮駅に発着する Metro を、 街路経由で直通させるものだ。 これにより、 ヨーロッパの主要都市としてのバーミンガムの地位がより確固たるものになる、 のだそうだ。

Metro のこの計画にはやや問題があると思う。 特に、 New Street 駅付近は狭隘な街路、急勾配(8%)、 急曲線などの技術的な困難を抱えている (一部、単線運行になる)。 最大幅2.6mと大柄な車両への批判が多い。

だが、 Midland Metro は Snow Hill から郊外側が高速鉄道並みで、 競争力は十分。 Metro で行けるところにわざわざバスで行く気にはならない (Metro がまだすいているというのもあるが)。 だから、どのようなルートで都心部へ延伸するにしても、 それが利用者からそっぽを向かれる心配は、ないと思う。 逆に、計画中のルートで乗り入れるなら、 技術的困難さから輸送力不足などを招かないか、 心配しておいた方がいいと思うくらいだ。

(第4回おわり)

バーミンガム、コーポレーション・ストリートとニュー・ストリートの交差点
(Photo-5): New Street と Corporation Street の交差点。 6番バスが Corporation Street の坂道を駆け下り、 Stephenson Place に降りていく。 この場所に、 将来 Midland Metro が乗り入れてくる予定。 (2001. 12. 30 撮影)

参考文献

  1. http://www.lrta.org/ (Light Rail Transit Association ウェブサイト)
  2. http://www.benoy.co.uk/pr/BULLRING3.html (Benoy ホームページ、プレスリリース)
  3. http://www.bullring.co.uk/ (Bull Ring ホームページ)

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高木 亮 webmaster@takagi-ryo.ac
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