RTざんまい
 
お写真 | 鉄道ざんまい | 橋梁ざんまい | 種蒔き
現在の場所 :
東武5000系メモ >> 東武5000: 7330系誕生
English
 
ページ執筆 2003. 8. 20
最終更新 2003. 8. 20

7330形の誕生

東武5000系メモ

そして、 1953(昭和28)年にいたり、 東武は民鉄では初めて、 20メートル車体の大形通勤電車の新造に着手する。 当初7330形、 あるいはわずか1年後に改番され7800形と呼ばれることになる車両である。

当初の7330という型番が如実に示すように、 この車両は明らかに73系の増備という位置づけであるが、 車体のデザインは当時の東武電車の標準といえる 「半流形」 という先頭形状で、 貫通路が中央についている。 73系に比べればずっとスマートなものだった。 とはいえ、 1953年のこの時点では致し方なかったと思うが、 いわゆるウィンドウシル (車体側面、窓の下にある出っ張り)・ ウィンドウヘッダー (車体側面、窓の上にある出っ張り) がある保守的な外観を持つ半鋼製電車で、 床は防腐剤のたっぷり塗られた木がむき出しであった。

主要機器は基本的に73系と同一のコンセプトで、 小改良をほどこしたものばかりである。 73系との併結も可能である。

まず、 主電動機は142kWのものが採用された。 73系ではMT40という「国鉄制式」の型番のモータということになっていたが、 これと容量が同じである。 電気的特性まで同一かは不明だが、 おそらく同一、 ないしそれに近いものだろうと思う。 歯車の歯数比も1:2.87で73系と同一とされている。 もとの63系が戦前の設計なわけだから、 7330形も考え方としては戦前を引きずっていることになる。

主制御器は、 日立の MMC-H-10E という多段制御器が採用された。 これは、 63/73系などに幅広く搭載された国鉄の制御装置 CS-5 の後継として、 おそらくは世界初の長距離電車といえる80系 (湘南電車) に採用された CS-10 に似たところがあるのだろうと思う。 MMC-H-10E と CS-10 のいずれも、 CS-5 に比べて制御段数が多いこと、 そして直列段から並列段へのわたりが加速力の変動の少ない 「橋絡わたり」 になっているらしいこと、 の2点が主要な違いであろう。

台車には住友金属のFS-10が採用されたが、 これは1951年に投入された有名な日光特急用57系電車で使われた FS-106 (ゲルリッツ式) や、 その前に採用されていた FS-7 (ウィングバネ式) のようなものではなく、 簡素だが乗り心地のよくない軸バネ式となっている。 通勤電車ゆえ簡素化を重視したのだろう。 73系のTR25台車も軸バネ式だから、 その影響だったのかも知れない。 住友お得意の 「一体鋳鋼製」 で台車枠は丈夫そのもの、 また 枕バネは重ね板バネではあったもののボルスタアンカを装備するという、 いかにも過渡期の台車らしい姿である。 この台車の設計上の最高速度は80km/hという資料をみたことがある (その昔「鉄道ピクトリアル」に連載されていた「住友金属の台車」の記事)。 何らかのミスプリントか、 あるいは筆者の記憶違いかも知れないが、 実際高速での乗り心地はあまりよくなかった。 なお、 新造車両のうち制御車(モータのない車両)2両は、 TR-25台車をどこからか流用して登場している。

ブレーキは旧型電車と同じ自動ブレーキで、 ブレーキシリンダーは車体側に装備されるいわゆる「車体ブレーキ」方式であった。

1953年には7330形として1M1Tの2両編成が7本新造、 その年のうちに7800形に改番され、 翌54年には7800形としてさらに11編成が新造され、 合計36両がそろうことになった。


画像に著作権表示の文字列がでる場合、 こちらをクリック。
高木 亮 webmaster@takagi-ryo.ac
(c) R. Takagi 2003. All rights reserved.