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東武5000系メモ >> 東武5000: 吊掛式駆動装置
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ページ執筆 2003. 6. 18
最終更新 2003. 6. 18

吊掛式駆動装置

東武5000系メモ

吊掛(ツリカケ)式駆動装置とは、 電車を駆動する電動機の重量の半分を車軸に取り付けたアクスルメタルを介して車軸に、 残りを「ノーズ」を介して台車枠にそれぞれ支持させ、 アクスルメタルによって車軸と電動機軸の相対運動が (「遊び」の分をのぞけば) 起こらないようにして、 車軸と電動機軸の間を歯車で結ぶ駆動方式のことである。

カルダン駆動では 「カルダン軸」 などの機構によって車軸と電動機軸のある程度の相対運動が許容されるが、 吊掛式では原則として車軸と電動機軸は相対運動しないのだから、 カルダン軸などは不要になる。 だが、 アクスルメタル経由で車軸に乗せかけられた電動機の重量は 「バネ下重量」 となるので、 同じ重量でも軌道破壊などへの影響が大きくなる。 そのうえ、 車軸の振動がそのまま電動機に伝わるため、 軽量化につながる電動機の高速回転化が難しいとされる。 また、 あまり 「がっちり」 電動機を車軸にくくりつけてしまうとさまざまな悪影響があるらしく、 多少の遊びがわざと設けてある。 従って歯車もがっちりかみ合わせることができない。 俗に「ツリカケ音」とかいわれる大きな騒音は、 この辺が原因となって生じる歯車からの音であるらしい。 こうした欠点が明らかであったから、 今回の記事に掲げる東武鉄道などの例外を除き、 日本では1950年代末までに廃れた方式である。

この時期、 吊掛式駆動からカルダン駆動への移行のほかにも台車の特性改善、 車体の軽量化、 客室内の居住性向上など多くの改良が同時に、 かつ一気に進んだため、 吊掛式駆動は日本では旧型電車の代名詞のようにいわれることが多い。 しかし、 これは必ずしも正しい理解とはいえない。 英国で走っている Class 321 は1988年新造だそうだが、 日本流にいうと1M3Tの編成で最高速度160km/h (100mph) を実際に出しており、 例の吊掛式の音をのぞけば特に問題はない。 英国では2003年1月に起きたロンドン地下鉄・チャンセリー・レーン (Chancery Lane) 駅における脱線事故の原因もWN継手の不良 (メーカの推奨どおりの保守が行われなかった) によるものとされており、 簡素で堅牢な吊掛式駆動への信頼感がまだ厚いようである。 日本国内でも、 駆動装置のスペースが十分とれない特殊狭軌線 (762mm軌間) 向けに近鉄が1980年代に導入した新車は吊掛式で、 電動機に関しては最新技術を導入して軽量化をはかったとされる。 面白いところでは、 JR貨物の最新電気機関車群が吊掛式だったりする (EF200はそうではない) が、 欧州本土では機関車向けには車体装架方式 (電動機を台車枠ではなく車体で支持する方式。 日本は台車枠支持が一般的) が普及していることも考え合わせ、 ずいぶん時代遅れな話だと思わずにいられない。


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高木 亮 webmaster@takagi-ryo.ac
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