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橋梁ざんまい >> [橋梁訪問記] アクアライン
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ページ執筆 1999. 11. 7
最終更新 2003. 5. 14

建設途上の東京湾アクアライン

橋梁訪問記
  • 撮影時期: 1995年夏

たまには 「レアもの」 の写真を、 ということで、 撮影年月が不詳なのだが恐らく1995年ころ写したと思われるこの写真群をご紹介しようと思う。 建設途上の東京湾アクアライン (1997年12月開業) を船上から撮影した貴重なものである。

この日乗船した「若潮」
▲この日乗船した船。
双胴船である。
大きな画像(JPEG): 83kB
このときは両親と出かけたが、 両親が特に橋好きというわけではない。 叔父がアクアライン工事中の海上の警備にあたる船の船長をしていて、 その関係でお誘いいただいたということである。 船は右の写真のような双胴船。 当日は見学会で、 他にも何人かの人が乗船していた。 船はJR京葉線・千葉みなと駅そばの千葉港を出港、 反時計回りに東京湾をめぐり元に戻るルートだった。

☆     ☆     ☆     ☆     ☆

出港してからしばらくは海岸沿いに南下。 「ザウス」 (船橋「ららぽーと」付近にある国内初の屋内スキー場) が見えたの何のといっているうちに、 羽田空港に向かうまっすぐな誘導灯列が海面に並んでいるところにやってきた。 このあと、 まず最初に見た横断道関連施設が川崎人工島である。

川崎人工島
▲川崎人工島。
船上はかなり混雑しており、 この写真のように他人の写り込みが多かったのが残念。
大きな画像(JPEG): 75kB
別画像(JPEG): 81kBもあります。
東京湾アクアラインホームページを見ていただければわかると思うが、 全長約15kmのアクアラインのうち川崎側約10キロは、 東京湾の底を抜ける海底トンネルである。 トンネル部の工事では地下鉄などでポピュラーなシールド工法 (鋼製の筒の前面に掘削装置がついていて、 この装置を前に押し込みながら掘進しトンネルを作る) が用いられた。 今回用いられたシールド機械は世界最大クラスだったと聞いている。 川崎人工島は、 当初はこのシールド機械の発進基地として掘られ、 開通後の現在は換気設備として残っている。 長大トンネルを走行する鉄道は電化がふつうだが、 道路トンネルは排気ガスを出しながら走る自動車のための配慮が欠かせない。 このため道路の換気設備は鉄道トンネルよりはるかに巨大にならざるを得ない。

「風の塔」 と呼ばれるようになった川崎人工島の現在の写真は ここ などで見ることができる。 なかなか恰好いいスタイルの換気塔が立っていて、 恐らく海上のいいランドマークになっていると思う。 しかし、 当時は左の写真のようにクレーンが大量にあるただの工事現場であった。

川崎人工島周辺を警備するボート
▲周辺を警備するボート。
交通量が多い海域、工事も困難だ。
大きな画像(JPEG): 103kB
人工島の工事現場そばでは、 左の写真にあるようなボートが警戒に当たっているのを見掛けることができた。 東京湾は船舶の通行量が多いから、 普段でさえ事故が少なくない海域であり、 そこで工事をするとなればこうした船に頼る必要が出てくるようである。 過密都市では何をやるのも難しいということか。

川崎人工島の周囲をめぐりながら、 我々の乗った船は進路を東よりに変え、 横断道路のルートに沿って木更津方面に向かった。

☆     ☆     ☆     ☆     ☆

沖合部橋梁遠景
▲沖合部橋梁遠景。
大きな画像(JPEG): 104kB
しばらく航行していくと、 やがて前方にアクアラインの沖合部橋梁が見えてくる。

アクアラインの川崎側はトンネルだったが、 千葉県の木更津側は橋梁となっている。 橋梁は浅瀬から沖合にかけて伸びる4384.4メートルの長大橋梁で、 橋梁形式は10〜11径間連続鋼箱桁橋である。 全面的に積層ゴムを用いた免震支承で桁を支えているようだ。

沖合部橋梁、やや近くから
▲沖合部橋梁。やや近くから。
大きな画像(JPEG): 95kB
橋梁部を木更津側から走行すると、 海に出てすぐのところで多少右にカーブを切るがあとは直線だ。 ただし、 沖合部では橋の高さを増してある。 この部分は航路を跨ぐ個所であり、 橋脚間隔も他より広くする配慮がなされている。 資料によれば、 橋梁の最大支間は240メートル、 最高点の海抜は40.85メートルに達する。 自動車は一旦坂道を登り、 航路を跨いだのち坂を下りトンネル部に突入することになる。 このあたり、 江戸時代に沖縄にあったという 「駝背橋」(だはいきょう) の趣きもある。

木更津人工島西端
▲木更津人工島の西端。
道路の勾配にあわせ海中に沈む斜面が見える。 現在はこの上にパーキングエリアが建設されているものと思う。
大きな画像(JPEG): 65kB
現在のアクアライン最大の名所「海ほたる」は、 木更津からこうして最高点を過ぎ走ってきた車がトンネルに突入する、 あるいは逆に川崎からトンネルを走ってきた車が海上に踊り出る、 まさにその地点に設けられた。 橋とトンネルをつなぐ場所には人工島が必要であり、 その島は斜めに通過する道路を守るのだから、 換気塔になる川崎人工島よりは必然的に面積が大きくならざるを得ない。 だから、 ここにサービスエリアを設けたのはお遊びではなく必然性があったわけだ。

木更津人工島東端
▲木更津人工島の東端。
大きな画像(JPEG): 83kB
こうして何枚かの写真を眺めてみると、 木更津人工島の面は水平であり、 この水平面を本線が一定の勾配で斜めに抜けていくようすがよくわかる。

木更津人工島東端から伸びる桁
▲人工島から伸びる桁。
トンネルからそのままの勾配で最高点までいっきに達する坂路を構成する部分。未完成。
大きな画像(JPEG): 85kB
橋は写真にある通り未完成だが、 橋脚はこの時点ですべて完成しているように見える。 桁は連続桁なので、 工場で製造した桁をもってきては順次継ぎ足す工法が取られているものと思う。

未完成の沖合部橋梁
▲未完成の沖合部橋梁。
大きな画像(JPEG): 62kB
ところどころ桁は切れているが、 橋脚はすでに腕を広げて桁が到達するのを待っている風にも見えて興味深い。 なお、 特に航路部分の橋脚は、 大型の船がぶつかることも考慮して足下にコンクリートを広めに打って防護してある。

☆     ☆     ☆     ☆     ☆

浅瀬部橋梁
▲浅瀬部橋梁。
一部を除きほぼ完成している。陸地に向かって果てしなく伸びる姿が印象的。中央の人は同乗の人、写り込んでしまいました。
大きな画像(JPEG): 61kB
未完成の桁を南から見たあと、 その下をくぐり北側に出れば、 いよいよアクアラインともお別れ、 あとは千葉港に帰るだけである。 北側から浅瀬部橋梁方面を写したのが左の写真だが、 やはり4kmの橋梁ともなれば規模壮大である。

京葉シーバース
▲京葉シーバース。
京葉工業地域の原油輸入の窓口となっている。
大きな画像(JPEG): 84kB
帰り道の途中で写した珍しいものをもう1点だけご紹介しておこう。 右の写真は 「京葉シーバース」 という原油輸入の基地である。 恐らくは浅瀬の多い海で、 巨大タンカーを陸の岸壁まで直接横付けさせるのは面倒だということなのだろう、 沖合にタンカーを横付けできる施設を作り、 ここで油を抜いてしまうようになっている。 油は海底パイプラインで陸地に運ばれる仕組みだ。 このときは横を通りすぎただけだったが、 何年か前にここにも遊びに行ったことがある。 そのときは、 海中クラゲだらけだったことが思い出される。


掲載した写真 (スキャナで取り込んだオリジナル画像)

羽田空港への誘導灯列。
川崎人工島。画面両サイドに人が見えるのは、船の上で撮影したことによる。
川崎人工島を別な角度から。最終的には換気設備となって現在に至っている。
このようなボートが往来する船舶を見張る。
木更津人工島(現在の海ほたる)からのびる、工事中の橋。遠景。
同上。もう少し近くから。横の人物は同乗していた他人。
同上。さらに近づいて。
工事中の木更津人工島の西端。斜めに海中に沈む斜面は道路のトンネルの勾配にあわせてこのようになっているものと想像される。
船上には橋を見物している人が他にもたくさん。
木更津人工島の東側。ここから立ち上がる橋梁は未完成。
沖合部橋梁の最高点、航路跨越部。未完成。
木更津人工島東端。近くから。
未完成の沖合部橋梁航路跨越部。より近くから。木更津人工島「海ほたる」は左手。
木更津人工島を東から。
工事中の沖合部橋梁。手前側は木更津、海ほたるは画面奥側。
木更津人工島「海ほたる」からのびる橋梁。
橋の下面。まだ塗装が輝いている。
橋の下をくぐり、北側へ。
橋脚。船舶がぶつからないよう防護してあるようだ。
浅瀬部橋梁全景。写真の人は同乗の方で知り合い等ではありません。
京葉シーバース。タンカーは沖合のここに投錨し、油を抜く。抜いた油は海底パイプラインで陸に運ばれる。
「若潮」。この日乗船した。


参考文献

  • 荒川, 鈴木, 中川: 「東京湾横断道路における人工島基礎」, 橋梁と基礎, 特集 橋梁の基礎および下部構造, 33, 8 (1999)
  • 「資料 国内の橋梁基礎形式例 2. 鋼管矢板基礎」, 橋梁と基礎, 特集 橋梁の基礎および下部構造, 33, 8 (1999)
  • NIKKEI NET アクアライン
  • 東京湾アクアラインホームページ

更新履歴

  • 1999. 11. 7 初稿

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