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2001. 1. 14. / January 14, 2001

アニメ、ネット、創造力
Anime, The Net, and Creativity

目次 / Contents

滑落? 日本の「アニメ」「マンガ」

Japanese "anime" and "manga" on the downtrend?

Although Japanese "anime" (animation) and "manga" (comics) now seem successful, many Japanese people have anxiety towards the future of them. One of the phenomena that is considered as proof to that anxiety is that there exist a sharp decrease in the total sales of manga and anime inside Japan since 1995.
いま、 手元に Raygun とかいう雑誌 (参考文献12.) がある。 タイトルの意味は「光線銃」。 1996年の古い号だ。 どうやらアメリカ合衆国の雑誌らしく、 USAではいくら、 カナダではいくらと値段の記載がされている。 しかし、 購入したのはスウェーデンで、 それも確かストックホルムの駅構内にある本屋 (多分英語でいえば newsstand ということになるのだろうが) であったと思う。

なかみは音楽雑誌らしいのだが、 なんでそんなのを買ったかというと、 表紙に 「レイガン」 とカタカナで書いてあったからだ。 この号が特に日本を特集したのか、 それともいつも日本のアーティストだけ取り扱う雑誌なのかもよくわからないが、 ともかくこの No. 38 とある 「レイガン」 には、 日本のアーティストたちの記事が、 アーティスティックなお写真とともに掲載されている。

で、 絶対出てきそうな名前 (例: Ryuichi Sakamoto) とか、 聞いたこともないようなミュージシャンの名前などにまじって、 Urusei Yatsura なんてのがあったりする。

目次に Uresei Yatsura とミスプリントされているのはご愛敬。 もちろんこれは有名な高橋留美子原作のコミック/アニメ 「うる星やつら」 のことなのであって、 ……ちょっと待てよ。 これが何で音楽雑誌に出てくるんだろう。 そう思って読んでみると、 これがどうやら英国・スコットランドはグラスゴー出身の、 4人ユニットの名前らしいのだ。

記事の冒頭を翻訳してみよう。

Urusei Yatsura というのは日本でもっとも愛読されたコミックのひとつで、 テレビ・映画で大きな成功を収めたシリーズでもある。 ざっと訳せば noisy star guys といった意味であり、 そのとおり1バンドにつけるにしてはまさにグレートな名前である。 でも、 スコットランドから?!? (中略)

マンガマニアはもうコミック版 Urusei Yatsura のストーリーはよく知ってるだろうけど、 まだ巨大ロボやホットな女の子たちがいる anime(アニメ)の丸い目の (round-eyed) 世界にとりつかれてないひとたちのために、 Kemp (訳注: バンドのメンバー) 自身に彼のバンドのニックネームの由来を説明してもらおう。 「これは男の子が異星人に出会うすてきな話なんだ」と彼はいう。 「その異星人のプリンセス・ラムは、 トラの皮のビキニをいつも着てるんだけど、 それがその男の子の前に現れて、 自分が彼と結婚してると誤解してしまう。 それで彼につきまとって彼の日常を楽しい 『生き地獄』 みたいにしてしまうんだ。 とてもとっぴで、 バカバカしくて、 すごく面白い。 だから僕らもなにかそれに関係があると思いたいんだ」

実は 「うる星やつら」 のことは何も知らなかったので、 なるほどそういう話だったか、 とこれを読んで納得してしまった。 「レイガン」 の同じ号には、 その他にもガンダムのプラモデルを集めているとかいう、 オハイオ州在住のギタリスト Nathan Farley 氏が登場したりしている。

1999年11月に Pokemon: The First Movie が全米の週間映画興行収入順位でトップに踊り出た、 という話も有名になった。 もっとも、 その件でウェブを漁ってみたら、 CNN.com のコメントなど見ても非難の嵐で、 子供はともかく大人たちに受け入れられる内容ではなかったようである。

会社でウェブ検索をしていたとき、 何かの入力を間違って「1.2」とかいう文字列で検索したら、 英国にある 「らんま1/2」 というコミック作品のファンサイトが出てきてびっくりしたこともある。 Yahoo! が発表した昨 (2000) 年の検索語ランキングの上位には、 Pokemon (3位) や Dragon Ball Z (2位) などが見られるという(参考文献1.)から、 これはどうも一過性の現象ではないのかも知れない。

しかし、 現時点では成功しているにしても、 それを永続的であらしめるためには戦略が必要だろう。 その点では懸念材料があまりに多い。 何しろ、 アニメ以外の日本映画は戦前は世界的名声を博していたのに、 現在それが再起不能に近い状態にまで落ち込んでしまったのは有名な話。 いわば前科があるから、 なおさら気になるわけである。

このことについて、 かなり前にわが 「RTざんまい」 でも言及したことがある。 コンテンツを整理する意味もあり、 多少冗長になるが以前に書いた記事をここに再掲載することにしたいと思う。 タイトルは 「アニメのレーザーディスク雑感」, 1999年10月12日に掲載したものである。

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お付き合いの始まり

LDとのお付き合いは、 「飛べ! イサミ」を衝動買いしたことに始まる。 秋葉原の石丸電気に出かけたらこの作品のボックスの下巻だけがあった。 上巻がなければ帰ろうと思って、 試しに店員さんに 「上巻がなければ買わないけど…」 といいながら下巻の箱を示したら、 15分ほどで上巻も出てきたので買わざるを得なくなったのである。 確か出張の日だったので、 出張先まで重たいLDの箱を持っていったような記憶がある。

この時点ではLDプレイヤーを持っていなかったので、 LDプレイヤーをソフトの後で購入した。 プレイヤー5万円、ソフト8万円、 しかし楽しめるのは「飛べ! イサミ」の1作品のみ。 まあ、 この作品はアニメ・漫画等のプロの方にも大変評判のよい、 いい作品だったと思うので、 安心して楽しむことができたのはよかったと思うが。

しかし、 こうして購入した時点ですでに LD はアニメ専用という状態になりつつあった。 洋画の新譜は DVD にほぼ移行していたからである (なかには DVD 発売がかなり遅れた「タイタニック」のようなケースもあるが)。 そういうこともあって、 また僕自身アニメがけっこう好き (ただしマニアとまでは到底いえない) であったこともあり、 いくつかのアニメ作品に手を出してみた。

高まる? 映画の優位性

個別の作品については別にコメントするとして、 まず一言「ソフトが高い!」。 例えば、 「カードキャプターさくら」は1回25分ものの全49話(第1部)。 LDには1枚裏表で4話しか入らないから、 都合13枚ものソフトを購入しないと話が完結しない (実は第2部があるからこれでも完結しなかったりするのだが)。 1枚6000円もするんだから10万円程度の投資ということになる。 「カード……」の番組としての対象年齢が小学生程度であることを考え合わせると、 何か如何にも不当な価格設定である。 こういうLDを、 テレビで放映された「予告編」まで全部入れて出す必要があるんだろうか。 そういうのを減らしてでも安い値段で出すシリーズとかがあってもいいのではないだろうか。 LD等でしか見られない総集編とかを出せば、 アニメマニアのコレクターたちは買うだろうし、 小学生が両親におねだりするものとしたって購入しやすいものになるのではないか。 どういうわけかそういう商品企画はあまりないようである。

こうしたソフトの形態で売ることを考えると、 映画というのは実に手頃であることがわかる。 「魔女の宅急便」は1枚で完結。 お話は何かまだ続編がいくらでも作れそうなところで終わっていて、 多少欲求不満もあるが、 1枚だけソフトを買ってきて見るのなら断然映画である。 テレビとの競争関係を経て、 映画の時代がふたたびやってくる、 ということなのかも知れない。

「本来の顧客」を忘れていないか

話をテレビシリーズアニメのLDに戻すと、 これらLDの売り上げがアニメのプロジェクトの中でどの程度の割合を占めるか、 ということが気になってくる。

映画のビデオを子供たちのために購入する家庭が増えているようだ (スタジオジブリ作品とか、ディズニーアニメとか) が、 こういうのはけっこう子供たちも好きで見てくれるようである。 親の立場からいっても購入しやすい価格である。 映画ごとに独立したストーリーならば、 1本買えばまた1本、 というようなことにもならない。 しかし、 テレビシリーズのLDとなると、 やはり購入するのはマニア層ということになるだろう。 「カードキャプター…」のように本来は子供向けのアニメであっても、 恐らくは子供たちとは違う層が購入してゆくということになると思われる。

そうであるとしたとき、 作品が本来の顧客である子供たちよりこれらマニア層に受けるような作品であっても、 LDの売り上げがプロジェクトを支配する場合にはOKととられかねない。 最近、 家族で見て楽しめるような作品が減ってしまったような気がするが、 その理由の1つとしてこのような枠組みがあるのではないか、 と懸念されるのである。

ちょっとだけ気になるデータを紹介しておこう。 朝日新聞、1999年7月25日(日)の日曜版は、 「100人の20世紀」 の第80回として手塚治虫さんを取り上げている。 そのなかにデータとして漫画の売上冊数・アニメの売上金額の推移グラフが掲載されている。 これによれば、 漫画の売上冊数 (月刊誌・週刊誌・単行本) は1994年をピークとしてそれ以降減少の一途を辿っている。 アニメの売上金額 (劇場用、テレビ用、ビデオ用) についても、 1994年ころから明らかな頭打ち傾向が見られる。

おもな理由は少子化とテレビゲームの隆盛なのだそうだが、 1994年以降の減少が急激であるから少子化は理由としては弱そうだ。 テレビゲームの隆盛は確かにそうかなとも思うが、 アニメや漫画とそれほど競合するものなのか疑問にも思われる。 現にゲームから生まれた「ポケモン」はアニメも好調ではないか。

我々がこどもだったころは、 テレビアニメは親から見るなといわれても見たくなるような魅力を持ったものだった。 いろいろ分析の仕方はあろうが、 アニメにそのような力があったこと自体を否定することはできないと思う。 1994年以降の急速な落ち込みは、 アニメの持っていたこうした力の減退傾向を示しているように思えてならないのだ。

いま、 日本が世界に輸出できる文化的商品は 「アニメ・マンガ・ゲーム」だけである。 ほんらい文化的価値の創造者でもあるべき大学人としては内心忸怩たるものがあるが、 この事実を認めないわけにはゆかない。 あるいは、 日本の技術的優位の喪失が現実になりつつある現在、 上記の言明から 「文化的」 という限定語を取り去っても成立する時代にまもなく突入するのかも知れない。 そんな現在、 関係者にはぜひ 「本来の顧客」 たちを惹きつける力をもった作品を、 ふたたび大量生産する体制を構築してほしいと願わずにいられない。

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ゲームの影響

Influence of games

The downtrend is believed to be caused by the strong influence of games. However, it is basically because of the stories that are not enough attractive; the story lines that are just like playing games can be attractive, but there are a lot more possibilities. If the author stick to the attractiveness of games, it will cause the burst of the bubble sooner or later.
これを書いてからすでに1年以上経つが、 あまり状況は変わっていないように思える。 当時はLDが主流だったものが、 現在はアニメもDVD主流に移ったし、 高木もアニメを継続的に鑑賞してみて、 もう少しいろんなことがわかってきたとかいうのもあるが、 基本的には今でも修正の必要が感じられない記事である。

以上の記事にて高木が示した懸念とまったく同じ種類のものが、 その後2000年に入っていくつかの雑誌等で取り扱われている。 例えば、 「プレジデント」 2000年9月4日号には、 「マンガはもう死んでいる」 と題する記事が掲載された(参考文献10.)。 マンガの販売部数が1995年ころを境に減少していることについて、 具体的な提言がなされている。

ほぼ時を同じくして発行された 「中央公論」 昨年9月号(参考文献11.)にも、 「滑落の日本製アニメ・マンガ―最大の輸出ソフト産業は今」 という 「研究」 記事が出ている。 こちらは海外の状況なども紹介されていて面白い。 ただ、 「ドラゴンボール」 のような、 バカ売れした作品がなくなった、 ということをとらえ、 日本アニメに力がなくなった、 とする海外のレポートは少し迫力不足かなと思う。 しかし、 海外で儲けても日本の関係者の収入になってない、 といった構造的な問題の指摘は重要なことであろう。

前記のどちらの記事にも共通するのが、 作品の魅力の問題である。

読売新聞の1991年1月31日夕刊に 「少年ジャンプ 読者引きつける『異界』性の作品」 なる記事(参考文献2.)がある。 「週刊少年ジャンプ」 が他のマンガ雑誌を大きく凌駕する部数を誇っていたころの記事であるが、 この読売の記事は 「『ジャンプ』と他の雑誌を比較してみると、 その作品世界に極めて顕著な違いがあることに気づく」 としている。 当時 「ジャンプ」 に連載されていた十九本の作品中、 最も多いのが 「闘争」 を描いた作品だ、 というのだ。

「闘争」 というのはまさにゲームそのものである。 「ドラゴンボール」 がヒットしたのは、 もちろん鳥山明という作家の力もあろうが、 ストーリーの 「ゲーム性」 の高さ、 というのも魅力のひとつとしてあったのだろう。

同じ悪弊が、 最近は活字の世界にまで入り込んでしまったかも知れない。 有名な 「ハリー・ポッター」 シリーズ(参考文献3., 4.)の世界も、 これまたまさにゲームそのものである。 翻訳者の静山社社長・松岡佑子氏も、 朝日新聞とのインタビューの中で、 この小説とゲームとの類似性を感じたことをほのめかしている。

しかし、 「ゲーム性」 というのは作品の魅力のひとつの側面にすぎないから、 売れるからとばかりそれにおもねっていれば、 バブル崩壊のようにいつかは破綻が来る、 というのも、 また明らかなことであったと思われる。

ゲームといえば 「プレイステーション2」 もあまり売れ行きがかんばしくないと聞いている。 このままでは、 マイクロソフトの 「Xbox」 に追いまくられることになるかも知れない。 しかし、 そのマイクロソフトにしても、 PCゲーム市場が単に引越してくるだけ、 というようなことになりはしないだろうか。

もしそうなれば、 これはゲーム市場そのものの飽和を表しているのかも知れない。 実際、 参考文献5.で ZDNet の Jesse Berst氏は、 PS2のことを 「地上最強のゲーム機」 と称してはいるが、 そのゲーム機でプレイできるゲームは 「代わり映えのない」 ものだとしている。 PS2 のほうも、 DVDリモコンを同梱したりして、 「ゲーム機」 というより 「ゲームもできるDVDプレーヤー」 になりつつあるのは少し皮肉だ。

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大丈夫かテレビアニメ

TV anime: are they OK?

Anime programs on TVs also seem to have problems. They now seem to rely heavily on DVD sales after the broadcast (formerly it was the sales of toys). However, the person who buy DVD will never be kids, while the anime programs are for kids. Another problem is that watching videograms on the DVD disks are not the same as watching TV programs. While watching TV can be a custom of a person in some cases, watching DVDs can never be the same. In addition, the attractiveness of each program seems not enough. I propose that the number of programs newly created and broadcast to be a bit more limited; currently there are 50 new anime programs being broadcast inside Japan!
ではDVDはどうかというと、 これまたあまり思うような普及を見せていないと聞いている。

前記のように、 高木は 「飛べ!イサミ」 のLDボックス (参考文献6.)を大枚はたいて購入したものだった。 しかし、 それを聞いたアニメ好きの某大手電機メーカ社員はいったものだ。 「DVD用の映像ソースは不足している。 『飛べ!イサミ』 は必ずDVD化されるはずだ。 きみはLDではなく、 それまで待ってDVDを購入するべきだった」

それを聞いてからもうすぐ2年になろうか。 確かにDVD用映像ソースの不足は深刻なようではあるが、 「飛べ!イサミ」 のDVD化という話はまだ聞いたことがない (ファンが運動し始めたようだが)。 しかし、 その一方で、 どうみても不出来としか思えない作品が、 テレビで放映されては数ヶ月程度の間を置いてDVD化される、 というのが多くなってきた。

1970〜80年代には、 アニメ等は玩具メーカがスポンサーとなって放映されていたことが多かった。 だから、 玩具メーカが 「○○ちゃんのコンパクト」 とか 「超合金○○ロボ」 とかいって売り出せるようなアイテムがアニメには必須だった。 ガンダムの富野由悠季監督も、 「営業サイドがロボットものの企画しか認めないから」 ロボットものをやってきたのだ、 と朝日新聞 「アニマゲDON」 でのインタビュー (参考文献7.) で発言している。

このようなスポンサーの態度は、 作品にも相当な影響を及ぼすことになる。 1990年ころには、 テレビアニメ自体がほとんどなくなってしまっていたような気がするが、 これは 「ガンダム」 以来のこうした戦略の破綻の結果でもあったろうと思う。

もっとも、 今でもこの種のアニメグッズは人気があるらしい。 例えば、 最近放映中の作品のなかで少し気に入っているのに 「おジャ魔女どれみ」 というのがある。 多分伝統的な魔法少女ものということなのだと思うが、 見ていると子供が欲しがりそうなアイテムが次から次に、 惜し気なく登場する。 これは、 いちいち買わされる親の方はたまったものではなかろう、 と思っていたら、 こんなページ参考文献8.)を見つけた。 やっぱりご苦労が多いみたいだ。

これがDVDを売るということに変わったのなら、 作品を作る側としてはよりベターな方向に行った、 といえるのだろうか。 どうもそうでもない気がするのである。 その理由は、 すでに1999年の記事に書いた通り。 本来の顧客である子供たちではない人 (いわゆるオタクな大人たち) が買って行くソフトでは、 作品の重点が違ってしまう可能性が大きいということだ。 その意味では、 「カードキャプターさくら」 (参考文献9.) がそのあたりをぎりぎりのセンでよく抑え、 小さな女の子たちと大きな男の子たち(笑) の支持を獲得できたのは成功だったといえるかも知れない。

それにしても、 テレビ作品を 「そのまま」 ビデオにして売り出すというのは、 何か間違ってないだろうか。

「そのまま」 というのは、 25分枠の番組があったなら、 全話放映分について、 次回予告等まですべて含めてDVDにして売り出す意味があるか、 ということだ。 最近、 過去の作品をダイジェスト版にして1枚にまとめて発売するケースも出てきてはいるが、 まだほとんどはテレビ番組そのままビデオ化発売である。

テレビ番組というのは、 「X曜日のこの時間にテレビをつけたらこれがやっている」 という習慣としての性質もある。 日曜夕方6時はサザエさん、 みたいなものである。 しかし、 それと 「ビデオグラム」 としての楽しみ方とはだいぶ違うのではないか。 だから、 大枚はたいてDVD等のボックスを買っても、 あまり見ないで終わってしまうようなことにもなる。

このままいけば、 テレビで放映した後DVDで売り出す、 というやり方も、 比較的近い将来破綻を来たすに違いない。

現在テレビ放映されているアニメ、 少し種類が多すぎるように思える。 「アニメージュ」 最近号 (参考文献13.) の 「アニメーションワールド」 というページには、 何と50本もの新作テレビアニメの情報がある。 アニメは現在でも相当 「労働集約的」 に、 何千枚の絵を手で描くとかいう膨大な作業によって作られている (CGなどを使って省力化するケースも増えているようだけれど、 まだけっこう 「コンピュータくさい」 動きが残っていたりして、 画面上ですぐにそれとわかってしまうものが多いように思われる)。 作品の質を高める意味でも、 作品に関しては 「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」 ではなく少数精鋭でやった方が、 かえっていい結果を生むのではないか。 同じことは、 おそらくマンガにもいえるのだろう。

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オタクを自己満足させるネット?

The net that let "Otaku" self-satisfied?

It is said that "Otaku" people (manga or anime maniacs) have been in the center to create anime and manga. However, recent "Otaku's" are said to be losing creativity. One reason is that anime and manga have "gained publicity", and it has become unnecessary for Otaku to fight the widespread incomprehension. The other reason is the emergence of world wide web which easily satisfies their creativity. I believe this is what WE should fight, maybe by creating something that can be compared to "Tetsuwan Atom", a famous robot character created by Tezuka Osamu.
さて、 最後に少し気になることをひとつ。 「中央公論」 昨年9月号 (参考文献11.) に掲載されていたとおぼしい、 著名な「オタキング」岡田氏の議論だ。

今手元に原文がないので(人に貸してある)、 以下正確ではないかも知れない。 記憶によれば、 岡田氏はアニメ・マンガをささえてきたのはオタクたちだという。 オタクたちはいわば差別されながら、 それをバネにアニメ・マンガの創造に向かってきたが、 最近になってそれらの日本での社会的認知度が高まってきたのとひきかえに、 その創造意欲も失われてしまった、 というのだ。

それはとりあえずいいとして、 ホームページを維持している人間にとって気になることは、 その創造意欲の捌け口としてインターネットのホームページがある、 と岡田氏が (高木の記憶によれば) 指摘していることであろう。

実際、 ちょっと有名になったアニメやマンガの作品であれば、 もう必ずファンのウェブサイトがオープンしていて、 当該作品についての詳細な紹介がなされていたりする。 そのエネルギーたるや称賛に値する。 そうではあるのだが、 それが創造性を削ぐ一因になっている、 といわれると…。

これ、 岡田氏がいったのではなかったかも知れないが、 仮にそうであったとしても、 このようなことをいう人は他にも非常に多数いる。 しかし、 どんな雑文でも書かないよりは書いた方が創造的である、 と高木は思っている。 ネット出身で成功した田口ランディ氏のような作家も登場しつつある。 思えば、 こうした批判は例えばワープロが登場したときにも出てきたはずである。 自費出版で本ができると、 何か凄い作品を自分が書いたと勘違いする、 などという批判なら、 もっと前からあったことだ。 メディアとしてのネットは、 こうした一方的な批判に応える意味でも、 これからたくさんのものを産み出して行かなければならなさそうだ。

最近、 ロボットがちょっとしたブームになっているようだが、 そのたびに手塚治虫の 「鉄腕アトム」 が、 朝のニュース番組にまでいちいち登場してくる。 作家としての手塚治虫の偉大な想像力に敬意を表すると同時に、 何年前の作品か考えるとやや情けない気もしてくる。 前世紀の始まりのときと異なり、 21世紀の始まりにいる我々はどうも夢を抑える方向にばかり頭を働かせ過ぎるきらいがある。 せめて、 思いきり盛大な夢を、 我々の想像力、 あるいは創造力で産み出し、 世に送り出してやりたいものだと思う。 高木も含め、 ネットピープルのいっそうの奮起に期待する。

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参考文献 / References

お勧め度を星の数(3個=満点)で表しています。 14.以下は本文中に記載ありませんが、 高木手持ちの作品で、 お勧め度だけ表示します。
  1. http://www.zdnet.co.jp/news/0101/04/b_0103_09.html
    ZDNN: 米速報:2000年の検索語ナンバーワンは「Britney Spears」, ZDNet News 速報 (2001. 1. 4)
    http://www.zdnet.com/zdnn/stories/bursts/0,7407,2670437,00.html
    Britney Spears topped Web search terms in 2000, ZDNet Tech News (3 Jan 2001)
  2. http://www.yomiuri.co.jp/yomidas/konojune/91/91h3a.htm"
    「少年ジャンプ 読者引きつける『異界』性の作品」, 読売新聞, 1991年1月31日夕刊, 2面.
    "Shonen Jump: Fantastic Manga Grab Readers" (in Japanese) The Yomiuri Shimbun (31 Jan 1991)
  3. ローリング, 松岡訳: 「ハリー・ポッターと賢者の石」, 静山社 (1999) (★★★)
    Rowling, J. K.: "Harry Potter and the Philosopher's Stone", Bloomsbury Publishing, London, U. K. (1997)
  4. ローリング, 松岡訳: 「ハリー・ポッターと秘密の部屋」, 静山社 (2000) (★★★)
    Rowling, J. K.: "Harry Potter and the Chamber of Secrets", Bloomsbury Publishing, London, U. K. (1998)
  5. http://www.zdnet.co.jp/news/0010/27/berst.html
    Berst: 「PS2米上陸が「新時代の幕開け」ではない理由」, ZDNet アンカーデスク (2000年10月27日)
    http://www.zdnet.com/anchordesk/stories/story/0,10738,2645040,00.html
    Berst: "What's the Big Friggin' Deal About Sony PlayStation 2?", ZDNet AnchorDesk (26 Oct 2000)
  6. LD-Box 「飛べ! イサミ」, バンダイビジュアル (1996) (★★)
  7. http://www.asahi.com/paper/special/animagedon/gundam.html
    朝日新聞 アニマゲDON, 富野由悠季氏へのインタビュー (1999)
    Interview to Mr Tomino Yuuki, Asahi Shimbun Special Page "Animagedon" (1999)
  8. http://www.geocities.co.jp/HeartLand/7406/he08/p085.html 父親の屁理屈, 85: 玩具を買う (1999) "A Father's Quibbles" (in Japanese), 85: Buying Toys (1999)
  9. LD 「カードキャプターさくら 1〜9」, バンダイビジュアル (1998〜1999) (★)
  10. 「プレジデント」2000年9月4日号(手元になし).
  11. 「中央公論」2000年9月号(手元になし).
  12. Raygun, No. 38, Raygun Publishing, CA, USA (1996)
  13. アニメージュ、24, 2, 徳間書店 (2001), pp.155-163
    Animage, 24, 2, Tokuma Shoten (2001), pp.155-163
  14. LD 「十兵衛ちゃん〜ラブリー眼帯の秘密〜」, バンダイビジュアル (1999) (★★)
  15. LD 「魔女の宅急便」,徳間書店 (1989年作品) (★★★)
  16. LD-Box 「YAT安心! 宇宙旅行」, バンダイビジュアル (1996) (★)

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高木 亮 / TAKAGI, Ryo webmaster@takagi-ryo.ac
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