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1999. 8. 22記

「たれぱんだ」

購入商品一覧

  • 末政ひかる(文・絵): 「たれぱんだ」, 小学館 (1999)
☆   ☆   ☆   ☆   ☆

最近流行中のキャラクター商品がそのまま絵本になっている本である。 書店の店頭に意味ありげに立てかけてあったので、 つい購入してしまった。

表紙には「たれぱんだ 今日もよくたれています。」とある。 中をめくると、 「さわるとあたたかく意外としっとりしている」とか 「好物はすあま」とか 「移動速度2.75m/h」で、 姿形は「どこからみてもたれている」とかとある。 ただし、以上のうち 「さわるとあたたかく意外としっとり」なのは体調がよいときで、 かぜをひくと「さわるとあつくなんだかかわいている」状態になり、 おたふくかぜにかかると「はれぱんだ」になる、 とかいうことがずうっと描いてある。 まったくもって人を食った本である。

奥付には著者名のほか、 キャラクター商品らしく著作権がサンエックス社にあることが記され、 サンエックスおよび小学館のホームページアドレスも記されている。 この奥付では末政ひかるさんという人がこの本にどうかかわったのかよくわからなかったが、 購入後に何と「天声人語」(注)がこの本(というか、 たれぱんだブームそのもの)に言及しているのを読み、びっくりした。

(注)……「天声人語」, 朝日新聞, 1999年8月19日, 40749 (1999), 1面.

この日の天声人語は、 「三十代の同僚と意見が対立した」という書き出しで始まる。 何のことかと思ったら、「たれぱんだ」が好きか嫌いか、 ということだったのだそうだ。 多分天声人語の書き手よりは若いと思われる同僚の記者は 「見てるだけで、いやされるんです。時代に疲れた現代人は」 といい、「頭の固い」というこの人は 「いい若い者が時代に疲れたなんて」とつぶやく。 僕は頭が固いとは思わないが、 「たれぱんだ」を見てるだけで「いやされる」なんて確かに変だと思う。 だから、ここは年の功に軍配を上げておきたい。

今年初めの「だんご三兄弟」のときもそうだったけれど、 こういう何だかよくわからないものが大流行りするとき、 それが時代の何かを反映しているからであると考えること自体は、 あながち間違いでもないと思う。 「天声人語」によれば、 「たれぱんだ」は小淵首相にそっくりなんだとか。 最初に一読したときは気づかなかったけれど、 言われてみればその通りであると思う。 「一見動かないように見える」が 「ふと気がつくとそばにいたりする」たれぱんだ。 こんなふうに忍び寄るものが「たれぱんだ」ならまあかわいいものだが、 「たれぱんだ」が反映する実物っていったい何なのだろう。 それが邪悪なものでなければいいと思うが……。


高木 亮 / TAKAGI, Ryo webmaster@takagi-ryo.ac
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